良い悪いは別にして・・・・
  むかし むかし そのむかし
「ねこやなぎ」
この、ねこやなぎの枝を使って箸をこしらえました。中国では柳はおめでたい木とされ、「一陽来復」の意を込めて柳の枝を輪にして飾るそうです。
「すぼずし」
写真は四国各地に伝わる「すぼずし」の写真だが、すしの代わりに「煮しめ」がはいったものを想像してもらえばいい。
柳の箸
 柳は春いちばんに芽を出すので縁起のいい木とされています。
 それに木肌が白いことから、汚れがなく、しかも折れにくいことなどから赤ちゃんのお食い初めのときなどにも使われます。ちなみに両箸は人が食べる反対側では神様が食べるのだと考えられています。
「煮しめ」
主に根菜類が多かったが、昆布などの海産物も使った。これに、するめや身欠きニシンや干鱈がはいると上等だった。

私が生まれたのは、牛を大切にする村でした。従って人は「かべ」と呼ばれる柵に囲まれた中で人が暮らしていました。田んぼや畑なども、みんな「かべ」の内側にありました。この「かべ」に藁すぼと箸をぶら下げて神へ豊作を祈りました。

朝いちばんに おじいさんが
前の日に切ってきた柳の枝を
小刀で削っていた。
「なにをするん?」
ぼくは膝小僧を抱えてしゃがみながら
おじいさんに聞いた。

「これで箸をつくるんだよ」
いいながら おじいさんは 
二十本のおなじ長さの柳の棒をつくると
しばらく眺めながら 太さのおなじものを
二本ずつそろえて組み合わせると
先のほうの皮を削って箸をこしらえた。

家のなかでは おばあさんが
昨日からこしらえていた
大鉢にはいった煮染めを小皿に
取り分けて きれいに盛りつけていた。
ぼくの好きな結び昆布に蒟蒻に高野豆腐
それに大根 人参 椎茸 里芋 などがあった。

「どうして十人分なん?」
すると おばあさんは いった。
「神様にあげる分が一人前」
そう言いながら ひとつだけ大盛りにした。
箸を削り終わるのと 盛りつけが
おなじころに出来上がると みんなで食った。

どんなに嫌いなものでも 今朝は全部食べた。
残してはいけないことに なっていたからだ。
食べ終わると神様に供えてあった煮染めを
おばあさんが 藁すぼに入れ
おじいさんは 食べ終わった柳の箸を
藁で簾状に編んでくれた。

藁すぼに入れたご馳走と
十人分の柳の箸の簾を持って
家の前の ぼくたちが出入りする
かべにこしらえてある木戸に
持って行ってぶらさげると
「今年も豊作になりますように」と祈った。

それが終わるとぼくたちは
たちまちカラスに変身
「カー カー」
と鳴きながら家々を飛びまわって
藁すぼを開いて中身を確かめると
好きなものだけ取り出した食べるのだった。
ことおぇえ(事追い)

目次へ戻る

トップへ戻る