良い悪いは別にして・・・・
  むかし むかし そのむかし
土の中から出てきたカエルは、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんのレントゲン写真のように手足を縮めて丸まっていた。
ぼくは五歳くらいのときから
自分用の鍬をもらっていた。
それは備中鍬といって三枚歯の子ども用の
小ぶりの柄のついた鍬だった。

とっぱな≠ニいう山の畑があって
それはきっと突端≠ニ書いたのだろうが
小さい畑をもらっていて
自分で耕していた時期があった。

あるとき鍬をふるっていると
土の中から手足を縮めたカエルが
真っ白な腹を見せて
転がり出たことがあった。

なあ お母んカエルはどうして土の中にいるんかのう
すると お母はこういった。
冬は寒けえ土の布団で寝とるんだがァ
ふ〜ん やっぱりカエルも土を鍬で掘るんかのう

カエルは手足を縮めたまま
仰向けにひっくり返って
ちっとも動かなかった。
ぼくはカエルのかわりに早く春がこないかなあと思った。
春はもうすぐだ。カエルより一足早くに木の芽が開こうとしていた。カエルでなくたって、春は暖かいから、ぼくは好きだった。

畑を耕すときは前に進みながら鍬をふるうが、畝をたてるときは、ぼくは後ろに下がりながらたてた。なかなか真っ直ぐがいかなかった。

啓蟄の日の天地返し

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