良い悪いは別にして・・・・
  むかし むかし そのむかし
田植え休み
むかしの学校には
田植え休みというものがあった。
それは梅雨にはいる
六月のことだった。

勤めに出る人が多くなって
いまは五月の連休に
田植えをすませてしまう。
いまの子どもたちには田植え休みはない。

田植えの時期には
忌み日という日があって
六月十五日には田植えをしてはいけなかった。
田んぼに姿を映してもいけなかった。

それがどうしてなのか
あのころは教えてもらえなかったが
ひょっとしたら大人たちも
知らなかったのではないだろうか。

ぼくはその日は喜んで
アマガエル捕りをした。
そろそろウナギが釣れるころだから
ウナギはアマガエルが好物だったから。

忌み日に植えられた稲は
棺桶の敷き藁になると言われた。
だから忌み日はぼくのアマガエル捕りの日。
むかしは田んぼを牛を使って耕していた。苗代といって稲の苗は自分の家でつくっていたが、いまは農協から買う。農協から買った田植えには、農協の苗のほうがロスがないからだ。
農協も変わった。いまの農協は葬式をするところになった。たまに結婚式場にもなる。
だから忌み日がわかる人などはもういない。あれは、たまには体を休めなさという、むかしからの決めごとだったのだ。

アマガエルが出る時期にはウナギやヤマメやハヤたちは、好んで食べる。魚たちには旬の物なのだ。

ウナギはアマガエルが好物だが、人間はウナギが好物だ。ぼくたちの村は山の中にあって川の水が冷たかったから、毎年、梅雨の季節になるとウナギは里の方から遡上してきた。

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