良い悪いは別にして・・・・
  むかし むかし そのむかし
お 盆
縁側の戸をいっぱいに開けて
真新しい茣蓙をその日は敷いた。
庭先に盆棚を飾るのは
ぼくたちの仕事だった。

茄子で牛をつくり
胡瓜で馬をこしらえた。
鳳仙花の花を鶏冠に見立て
茗荷で鶏を飾る。

牛や馬はわかるけえど
どうして鶏もいるん。
そう聞いたらお婆さんに
時をしらせるのにいるんだと言った。

それから縁側に提灯を飾った。
庭先には瓦を敷いた上に
松の油のよくのった
根の部分の割木を燃やした。

お婆さんは本当に帰ってくるん。
ああ 盆の間は家へ帰ってくるけえ
間違わんように火を灯すんでえ。
お爺さんは汗をふきふき盆飾りをした。

ほんなら化けて出るんかのう。
ぼくはお婆さんは好きだけど
幽霊になって帰ってくるんなら
帰らんでもいいと思った。

ぼくたちの村は盆のあいだ
幽霊だらけになるなあと思った。
盆はだからあまり好きではない。
もうすぐ夏休みも終わるし。

最近の茄子も胡瓜も細くて小さいから、貧弱な牛や馬だ。鶏は鳳仙花の鶏冠をつけてできあがり。イヤだなあ、幽霊になったお婆さんに会うのは………。

松の根を掘りに行ったのはこの日のためだったのか。松は燃えるとき、いい匂いがする。盆は嫌いだけど、松の匂いは好きだ。
盆棚には茄子で牛をつくり胡瓜で馬をつって黍の毛で尻尾もこしらえた。うちの場合には、お婆さんが寝ぼぶけだったから鶏もこしらえた。あとは蓮の葉にご馳走を飾る。この梯子段がどうしてあるのかわからなかった。足がないのに………。

目次へ戻る

トップへ戻る