撮影:2013年7月12日

なにを好きこのんで夜の咲くの?

カ ラ ス ウ リ

寺田 寅彦 『からすうりの花と蛾』より(抜粋)   
  ことしは庭のからすうりがずいぶん勢いよく繁殖した。中庭のがきのばらにからみ、それからさらにつるを延ばして手近なさんごの木を侵略し、いつのまにかとうとう樹冠の全部を占領した。それでも飽き足らずに今度は垣の反対側のかえでまでも触手をのばしてわたりをつけた。そうしてそのつるの端は茂ったかえでの大小の枝の間から糸のように長くたれさがって、もう少しでその下の紅蜀葵こうしょくきの頭に届きそうである。この驚くべき征服欲は直径わずかに二三ミリメートルぐらいの細い茎を通じてどこまでもと空中に流れ出すのである。
 毎日おびただしい花が咲いては落ちる。この花は昼間はみんなつぼんでいる。それが小さな、かわいらしい、夏夜の妖精フェアリーの握りこぶしとでもいった格好をしている。夕方太陽が没してもまだ空のあかりが強い間はこのこぶしは堅くしっかりと握りしめられているが、ちょっと目を放していてやや薄暗くなりかけたころに見ると、もうすべての花は一ぺんに開ききっているのである。スウィッチを入れると数十の電燈が一度にともると同じように、この植物のどこかに不思議なスウィッチがあって、それが光のかげんで自働的に作用して一度に花を開かせるのではないかと思われるようである。ある日の暮れ方、時計を手にして花の咲くのを待っていた。縁側で新聞が読めるか読めないかというくらいの明るさの時刻が開花時で、開き始めから開き終わりまでの時間の長さは五分と十分の間にある。つまり、十分前には一つも開いていなかったのが十分後にはことごとく満開しているのである。実に驚くべき現象である。
 からすうりの花は「花の骸骨がいこつ」とでもいった感じのするものである。遠くから見ると吉野紙よしのがみのようでもありまた一抹いちまつの煙のようでもある。手に取って見ると、白く柔らかく、少しの粘りと臭気のある繊維が、五葉の星形の弁の縁辺から放射し分岐して細かい網のように広がっている。つぼんでいるのを無理に指先でほごして開かせようとしても、この白い繊維は縮れ毛のように巻き縮んでいてなかなか思うようには延ばされない。しいて延ばそうとするとちぎれがちである。それが、空の光の照明度がある限界値に達すると、たぶん細胞組織内の水圧の高くなるためであろう。螺旋状らせんじょうの縮みが伸びて、するすると一度にほごれ広がるものと見える。それでからすうりの花は、言わば一種の光度計フォトメーターのようなものである。人間が光度計を発明するよりもおそらく何万年前からこんなものが天然にあったのである。
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木々が葉を落としたなかに、ひときわ赤い実がぶらさがっているのを見ると心がなごみます。枯れた蔓ごと

取って家に持ち帰り、インテリアにしてもいい。そんなかわいさがカラスウリにはあります。

【カラスウリ】スミレ目ウリ科カラスウリ属カラスウリ。ツル性の多年草。

日没とともに咲き日の出とともにしぼむ一夜花
  雌雄異株です。どちらにも花が咲きますが、実がなるのは雌株だけです。もしカラスウリを見かけたら、花(だだし昼間はつぼんでいます)の下がふくらんでいるかどうか見てください。もしふくらんでいたら雌株です。秋から冬のはじめにかけて真っ赤な実ができます。花が一箇所から何個も咲いていたら雄株で、こちらは花は咲きますが、咲き終わったら落花してしまいます。
  ただしカラスウリの花は夕方から咲きはじめ、日の出とともにしぼんでしまいます。したがって、めったに花を目にするきかいはありませんが、まるで花弁のふちがレースのようになっています。この派手さは夜行性の虫たちを呼び寄せるためでしょうか。
 
カラスが食べるという俗信から名づけられたカラスウリ
  原産地は日本、および中国です。カラスウリという名はどうしてついたのは分かりませんが、一般的にカラスが食べるウリだからという節があるようですが、カラスが食べているところを見た人はいません。
  日本人は実ができても食べられないものによく動物の名前をつけるようですが、きっと食べられないよと知らせるために動物の名をつけたのでしょう。赤い実をもると美味しそうですが、実際に食べてみると毒ではありませんが、苦みがあるそうです。
 

上は咲き終わったもの。下はいまを盛りと花開く。

撮影:2013年7月21日

撮影:2013年7月10日

撮影:2013年7月11日 pm19:30

1週間後  縦縞模様の実なった。

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撮影:2013年7月11日

昼間に見たカラスウリの雌花。もう実がふくらんでいる。

撮影:2013年7月10日

昼間に見た雄花。夜になると数本かたまって花が咲く。