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最初、矢切に引っ越してきた年には、浄水場建設予定地が広大な草原になっていて、そこに一面、ひなげしが咲いていた。これはきっと花壇の花が逃げ出したに違いないと「逃亡花」と名づけたものだった。

どうです。この度迫力。雄しべと雌しべが、花の中央にちょこんと納まっているでしょ。なんとまあ、仲のいいこと。うらやましいでしょう。

けんかでもしたんでしょうか。たがいにそっぽを向いていますね。それは人間のかってな想像。より太陽を浴びようと、それぞれが工夫しているんですよ。けっして夫婦げんかなどではありませんからね。あなたの家と違います。

ひなげし 集団の力

【逃亡花】ほんとうの名前は逃亡花などではありません。れっきとした名前があります。例のアグネス・チャンではないけれど ♪おっかのう〜え ひっなげし〜の は〜な・・・・・・ そうです。ヒナゲシです。漢字で書くと雛罌粟または雛芥子。むずかしい字ですね。またの名をポピーともいいます。
  ヨーロッパ原産のケシ科の一年草です。夏目漱石の有名な小説の『虞美人草』という作品があります。こういう呼び方もするようです。中国の秦(しん)時代末期の楚(そ)の武将、項羽(こうう)は、秦を平定していちじ統治者になったが、のちに漢の創始者になる劉邦(りゅうほう)に追いつめられ、自死を覚悟していたとき、虞(ぐ)という愛人が項羽の贈った詩に合わせて舞をまった後、自刀した。その虞の墓のまわりに生えていたことから虞美人草と呼ぶようになったという物語がある。いかにもいかにもと思わせるような楚々とした花です。
  矢切はヒナゲシとは関係ありませんが、伊藤左千夫の小説『野菊の墓』の舞台になった関係で野菊が有名ですが、女主人公の民さんの亡くなった墓のまわりに野菊が咲き乱れています。もっとも、この話はフィクションです。
  漱石は虞美人草とよびましたが、私は「逃亡花」と呼びます。その理由は、私が矢切に越してきたころ、いまは浄水場になっていますが、当時は草ぼうぼうの広場でした。そこにこの花が、一面に咲いていました。そのとき私は花壇のポピーが逃げ出したのでは? と思いました。そこで逃亡花と称して、その年の年賀状にはこの花を版画にして送りました。とても意外性があったようで、反響がありました。



※ひなげし美術館=岐阜県恵那市にある。スイス在住の画家・横井照子の作品を展示してある。
            〒509-7201恵那市大井町2632-105 恵那川上屋東 TEL(0573)20-1181

※田中家ひなげし館=利尻鴛泊登山コース入口の清閑な所に位置した旅館。
              〒097-0101 北海道利尻郡利尻富士町鴛泊本町115
               http//www.telnet-rishiri.info/pr/hinageshikan/

※『ひのきとひなげし』=宮沢賢治の小説。青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)

※♪ひなげしのページ♪=写真のきれいなHPです。http://www.milmil.cc/user/saihoku/