祭りには、どじょう汁を食べる。千屋神社の祭りは毎年11月1日。稚児行列を先頭に御旅所まで繰り出した御輿はここで休憩してお祓いをすませ、再び神社へ戻って行く。いまは、この田んぼも宅地になり家が建っている。田舎も都会とおなじように、開発のまえには神もも仏もないのだ。

田んぼに水がはいると お爺さんは
井出に米糠をまきはじめるのだ
今年も米が穫れますようにという
おまじないだと ず〜と信じていた。

その田んぼの石垣の上の畦道は
隣へ回覧板を持って行く近道だったから
よく通るのだが
マムシがいて 恐かった記憶がある。

マムシがでるのは 米糠のせいだと
いつか そう思うようになったら
なんだか お爺さんの顔が
だんだん マムシに似てきた。

夏が過ぎ 秋が終わり
初霜が下りるころになると
お爺さんは 枯れ草を集めてきて
マムシのいる石垣の下の水路の水をかい出す。

水をかい出された 漉し餡のような泥を
はじから順に 掘り始めるのだった。
すると むぎゅ〜 とか鳴きながら
どじょうが 這い出してくる。

じょうずにつかんで つぎつぎと笊にいれる
はじからはじまで 掘り終わると
笊のそこは どうじょうだらけになる
それから谷川に浸けておいて泥を吐かせる。

そうか お爺さんが米糠をまいてたのは
おまいじないなどではなく
冬のまえに 熱々のどじょう汁を
食べるためだんたんだな ようやくわかった。

お爺さんが死に お父さんも死んだのに
マムシ一家はいまもいる
代々続くマムシの家でもあるのだろうかなあ。
 

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上ひらの田んぼを耕す父。画面右がマムシの一家の住みか、その下が、どじょうのいる水路。
左上の箱は、まめむぎ(イカル)の飼育箱。牛は千屋牛。手綱一本で自由自在に使いこなせた牛、女子どもでも扱えた。そな名残は碁盤乗りに見られる。

泥の中に潜んでいるどじょうは、清流で一昼夜、泥を吐かせる。それから、日本酒をぶっかけて酔っぱらわせる。
十月の想い出