毎年十一月一日は千屋神社のお祭りだった
宵祭りには家に持ち帰った灯籠に
思いおもいの絵を描いて火を灯し
神社の境内や石段に飾るのが子どもたちの役割だった

祭りの当日は学校も早引けをして
お祭りに参加した
境内に所狭しと並ぶ露天でぼくは毎年
新聞紙の袋にはいったブロマイドを集めていた

美空ひばりや小鳩くるみや松島トモ子を
ぼくの部屋の壁に貼って楽しんだ
そしていつか美空ひばりのような
きれいな人を嫁さんするんだと夢見ていた

祭りでただひとつ心残りなのは
女の子は巫女舞の役をもらい
男の子はお稚児さん役をもらうのだが
ぼくはついに役をもらうことなくふる里を出た

祭りの夜は新築なった家で
こけら落としの神楽がまわれた
八畳ふた間をぶち抜いても足りず
"やんさば"が追加されて青年がそこに陣取った

酔っぱらった青年たちが肩を組みながら
やんさ やんさとはやしたて
どこどこの○○ちゃん
今夜行くぞなどと叫んでいた

ぼくも早く大人になってやんさやんさと
おお声ではやしたてたかったのに
いつの間にか大人になるまえに
ぼくはふる里を棄ててしまっていた
そうなんだ棄ててしまったのだ。

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11月の声をきくと、そろそろ雪が降る。初雪だ。いまは、むかしのように雪は降らない。地球温暖化のせいだというが………。

徹夜で行われる神楽では、子どもたちはいつも途中で寝てしまうが、大黒舞になると、みんな目を覚ましたものだ。大黒様は打ち出の小槌で宝物を出し、餅を客席にばらまいてくれるからだ。

千屋神社の祭りは毎年11月1日に行われる。いまも変わらず行われているだろうなあ。宵祭りの日、ぼくたちは灯籠を家に持ち帰って、思いおもいの絵を描いて神社の境内や石段を飾った。むかしは、こうして子どもたちにも社会参加の機会があった。そのためなら学校だって休みだった。

十一月の想い出

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