梅雨入りのころになると
母が ふきの葉に包んだ 田植えいちごを
持ち帰ってくることを知っていたから
いちご欲しさにぼくは たきぎこりに山へついて行った。

いやいやついて来るぼくをあきさせないために
山道を登りながら
母は物語をかたって くれるのだった。 
ほととぎすが 大きな声で啼いていた。

むかしむかし あるところに 
体の弱いあにさんと おとうとがいたそな。
ある日 おとうとは 山へ 木こりに行って
やまいもを見つけて 掘って帰ったと。

あにさんは うまいうまいというて食うたげな。
ところが よこしまな あにさんは
こんな美味いものを おとうとは
わしより いっぱい食うとるに ちがいないと

夜中に 寝てるおとうとの腹を切り裂き 
なかをのぞいたところ くずいもばかりだった。
それを見ていた神様は怒り
あにさんを ほととぎすの姿に変えたそうな。

それから あにさんほととぎすは
明けても暮れても 朝から晩まで
オトト コイシ オトト コイシ と
啼くようになったとさ。







 

村の人たちは、なにか願いごとがあるたびに御大師さまめぐりをした。山には四十八の石仏があった。

たきぎ山は村人みんなの山だった。だれでも、いつでも、たきぎを伐って帰ることができた。村の共有林、入り会い山ともいった。みんなが、最低限の暮らしができるように、村にはこうしたルールが設けられていた。

六月になると山では田植えいちごが熟れた。その年、最初に食べられる甘い食べ物だった。続いて桑の実、びーびーいちご(ぐみ)が熟れた。
六月の想い出

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